【元堅】 「貴様・・・・・・」 呪うように言って、元堅は松明を投げ捨てた。 太い腕が、グイッと史鋭慶の胸倉をつかむ。 【史鋭慶】 「俺を、殺したいのか?」 元堅の目をまっすぐに見て、史鋭慶は感情のかけらもない声で言った。 【元堅】 「ああ。殺しても、殺したりねぇよ」 岩のように固く握りしめた拳が、史鋭慶の頬に食い込む。 史鋭慶は、それでも眉一つ動かさなかった。 口をきつく結んで、冷たい目で元堅を見ている。 殴られた頬が、赤くなっていた。 【元堅】 「なぜ、俺じゃなくて、俺の家族だったんだ?」 血を吐くような元堅の言葉に胸が痛む。 【史鋭慶】 「あの場に、お前がいなかったからだ」 だけど、史鋭慶本人は、淡々と言っただけだった。 【元堅】 「なら、なぜ殺した?」 史鋭慶の胸倉をつかんで言う元堅の腕は、怒りでブルブル震えていた。 【史鋭慶】 「王は皇帝の息子がなるべきだなどと馬鹿げたことを言わなければ、お前は使える男だからだ」 【元堅】 「俺を脅迫するために、殺したと言うのか?」 元堅の顔に、見る見る血が上る。 俺の持つ松明に照らされたその顔は、まるで鬼のようだった。 【史鋭慶】 「今から思えば、殺したのは判断の誤りだったがな」 【元堅】 「貴様っ!」 振り上げた元堅の拳が、薄く笑った史鋭慶を容赦なく襲う。 ガツッと鈍い音がして、史鋭慶の唇から細い血が流れ落ちた。 それでも、史鋭慶は冷ややかに凍りついた顔を崩さない。 そんな史鋭慶を、元堅はありったけの憎しみを込めてにらみ続けていた。 |